TOPIC/2014.10.02

『お薬のじかん』の過去のTOPICです。

アプリケーションの開発から学んだこと: 福井一玄 at TEDxKeio

全国の中高生によるスマートフォンアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園」で、2013年に見事3位入賞を果たした慶應義塾中等部・福井一玄氏。Excelを少し使えるだけだったという彼が、なぜアプリ開発へのめりこむようになったのか。その理由とそこから得た学びや夢を、少年らしく語りました。(TEDxKeioより/この動画は2014年6月に公開されたものです)

【スピーカー】
慶應義塾中等部3年生 
(※肩書は当時)

【動画もぜひご覧ください】
アプリケーションの開発から学んだこと: 福井一玄 at TEDxKeio

キッカケは電車の中吊り広告だった

福井一玄氏(以下、福井):慶応義塾中等部3年の福井一玄です。僕は今年(2013年)の10月に「お薬のじかん」というアプリケーションをリリースしました。今日は、僕がアプリケーションを開発する上で、学んだこと、大切にしたことについて自分の言葉でありのままに伝えたいと思います。

もう一年以上前のことになります。授業で疲れきっていた僕は電車の中でいつもと同じ所に立っていました。でも、ひとつだけ違っていたのは、いつもの見慣れた広告が「アプリを作ろう」というものに変わっていたのです。その広告には「誰にでも簡単に出来」「お小遣い稼ぎにも」と書いてありました。

(会場笑)

もちろん僕は、「誰にでも簡単に」のほうに、興味を持ちました。

その時僕は、運の良いことに、パソコンもスマートフォンも両方持っていたので、さっそく専門書を買って自宅でにらめっこすること、丸一日。エクセルが少し出来るようになり、パソコンの面白さに気づき始めているころでしたが、パソコンは学校の宿題で使う程度だったので、僕にはさっぱりわかりませんでした。

でも、あの時の広告が頭に残っていたので、何か良い方法はないかなと思っていた時に、たまたまテレビで「Life is Tech!」のことを知りました。それは中高生に向けてプログラミングのキャンプを行っているというものでした。これは行くしかない。そう思った僕は、その冬のキャンプに参加しました。

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ほどなく、簡単なアプリケーションが作れるようになり、それが実際に動いたときの感動は、今でも忘れることができません。でもそのときは、自分が何を作りたいのか、考える余裕はなかったので、言われたものをただ作っていく自分に少しもどかしさを感じていたのも事実です。

アプリケーション開発の面白さを知った僕は、その後もプログラミングの勉強を続けていき、そろそろオリジナルのアプリケーションをを作ろうと思った時、僕は再び壁にぶつかりました。

それは、何を作りたいのかわからない、それが本音でした。でも、僕には大切にしている父の言葉があります。どんな職業でもいいから、社会や人の役に立つことをしなさい。人はひとりでは生きられないので、少しでも社会に還元しなさい。

社会や人の役に立つことといっても、すぐに良いアイデアが浮かぶわけがありません。また、自分で全ての問題を解決できるわけでもありません。でも、僕にでも出来ることがあるかもしれない。そう考えた僕は、いつもよりも自分の身の回りのことを見渡してみました。

そんな思いでいたときに、たまたまテレビで、高齢者の孤独死の現実という番組が流れていました。日頃から心臓の悪い祖父や、高齢である曾祖父の状態を見てきた僕は、ふと、ひとつのアイデアが浮かびました。

もし、一人暮らしの方でも、誰かと常に繋がりがあれば、孤独死は防げなくても早く発見することは出来るのではないかと思ったのです。高齢者に負担無く、毎日の安否の確認をするにはどうしたらよいか。そう考えたときに、僕は、ほとんどの高齢者の方が使用している、あるものの存在に気づきました。

それは、薬です。高齢者の方が、日課である薬を服用するために、その家族に薬を服用したこと、すなわち、その高齢者の方が元気であることが、自動でメールで送信されれば良いと考えたのです。

アプリ「お薬の時間」とは?

ここで、「お薬の時間」について動画で紹介したいと思います。

実はこの「お薬の時間」、アプリ甲子園という大会で500以上のエントリーの中から第3位に入賞しました。

(会場拍手)

ちょっと自慢をすると、中学生で入賞したのは僕だけでした。さらに、NHKや『ニュースエブリィ(日本テレビ系列)』などでも取り上げていただきました。

でも、正直なことを言うと、順位そのものよりも嬉しかったのは、大会で消費者が支持してくれるかという点で、高得点がいただけたことです。自分が一番思いを込めたところが、しっかりと評価してもらえる。そんな成功体験は、僕に次のモチベーションを与えてくれました。それは、このアプリケーションを必要としてくれている方、すべてに使っていただくということです。

高齢者の中には、僕のようにスマートフォンに詳しい人がまわりにいる人ばかりではないと思います。そして今、メールの送信先が家族や知り合いなどに限定されています。

でも、もしこのメールの送信先として高齢者を支援していく団体を協力していくことや、もっと言えば公共サービスの一貫として取り入れていただくことができれば、全員が繋がりを持つことができ、一人暮らしの方にも安心した老後が送れるようになるのではないかと思っています。

思いは行動して初めて価値になる

では、そろそろ最後になりますが、アプリケーション開発は、難しいプログラミング技術を僕に教えてくれました。でも、本当に学んだことは他にあります。それは、思いは行動にして初めて価値になる、ということです。

(会場拍手)

中学生の僕には、何が正しく、何が間違っているかの判断は少しずつ出来るようになってきました。でも、今の社会にある問題は大き過ぎて、僕の力では全てを解決することは出来ません。

今日僕が話してきたことは、決して大きなことではないと思っています。社会を良くするためにアプリケーション開発を始めたのでなく、残念なことに、このアプリケーションを必要としてくれている方、全てに使っていただいているわけでもありません。

ただ、家や学校、身近なところにある興味から始めた僕の小さな一歩は、僕に当事者意識を身につけさせてくれました。難しいから無理だ、ではなく、どうしたら出来るのかということです。

このような場所でいろいろ話していても、本当は不安でいっぱいです。でも、自分がやりたくて夢中でやったことが、結果として誰かの「ありがとう」に繋がることを知った僕は、次は何を作ろうかと考えるとワクワクしてきます。

開発をしていくなかで、尊敬する先輩や多くの友人に出会いました。そしてその存在がモチベーションとなって、僕の背中を押してくれます。ひとつのアプリケーション開発からこのような気持ちになれたこと、本当に嬉しく思っています。

僕はまだ15歳。急ぐ必要はないと思っています。まずは一歩ずつ確実に歩んでいき、少しでも社会に還元できる、そんな何かをこれからも作り出していきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

https://web.archive.org/web/20141002040529/http://logmi.jp/23693
アプリ甲子園概要
https://www.applikoshien.jp/outline/


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